全部飲めればお酒マスター!?「世界の珍しい民族酒」
目次
始めに
現代の世界では通販が充実し、珍しいお酒も気軽に入手できて便利ですよね。
珍しいお酒について調べていると、あまり知られていないフルーツや、イモ類や穀物で現在のお酒の礎となるお酒をつくっていた資料が見つかったりします。
それらは何処かの民族の伝統的なお酒として今でも飲まれていたり、
味や生産性で劣るのでいつしか忘れ去られたり、
そもそも名前がなかったり。
この記事はそれらの珍しいお酒を「民族酒」と呼んでまとめたものです。
クク
参考資料やサイトを基にしていますが、私見を多分に含むのでご注意ください。
Lv.1 市販されていることが確認できる
カカオフルーツ
チョコレートの主成分であるカカオは種子を主に使いますが、白い果肉部分には甘味と酸味があり「カカオフルーツ」と呼ばれています。
GODIVAさんのカカオフルーツジュース飲んでみた。
薄く白濁していて、フルーティーな甘味と酸味のあるジュースだったよ!
カカオフルーツのお酒
ベトナム産カカオから作られたカカオフルーツワインが日本でも買えるようになりました。
白樺の樹液
ウォッカは白樺の炭で濾過して不純物を減らしたことで有名なお酒。
実は白樺はメープルウォーターの様に樹液を飲むことができ、日本でも通販で購入できます。
甘味があるので醸造でき、醸造酒も蒸留酒も売っているけど、こちらも日本未輸入の様子。
カシューアップル
カシューナッツは種子を食べますが、カシューアップルと呼ばれる果実部からジュースが絞れます。
(正確には茎らしいよ。)
しかし傷むのが早いので生産国で消費するのが主。
ウルシアレルギーは要注意!
インドではこのカシューアップルやココナッツの蒸留酒を「フェニ」と呼んで愛飲しています。
参考サイト
ついに日本でも飲める日が!
ナンセ
ナンセはアセロラの仲間の黄色い果実。
私の最推し辛味調味料であるマリーシャープスの燻製風味は、このナンセの木で唐辛子を燻製しています。
めっちゃスモーキーでニンジン、玉ネギ、ニンニク等が入って味がしっかり付いているのでオススメです。
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ヒイラギ
日本でも馴染みの深いヒイラギ。
ヒイラギの実が食べられそうな外観をしていたので検索していたら、なんと見つかってしまいました。
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Lv.2 割と馴染みがある原材料
乳酒
モンゴルの伝統的なお酒としては有名なのが「アイラグ」こと馬乳酒。
酔う為ではなく、乾燥地帯の大切な水分であり、貴重な乳の保存方法の一つです。
馬乳の乳糖は約6%(家畜中最多)あり、醸造するとアルコール分は2~3%位。
実は馬以外にも牛・ヤギ・ヒツジ・ラクダの乳酒もあるのだとか。
牛乳のお酒
中国・モンゴル自治区の牛乳酒は日本でも買えた!
タピオカ
タピオカはキャッサバという芋のデンプンで作った白玉のようなものです。
有毒な品種を使うことが多いそうですが、皮を剥いて水に晒して毒抜きをしてから発酵させるそうです。
エルダーベリー
ニワトコとも呼ばれる植物。ニワトコの杖はハリーポッター好きな方は聞いたことあるかも。
花はエルダーフラワーであり、ハーブティーやコーディアルシロップとして用いられています。
イギリスではエルダーベリーの手作りワインを作るのが伝統だそうなので、イギリスの友人を作るところから始めていきたい。
日本でも買える
ハンガリーのフルーツブランデーこと「パーリンカ」。
そのパーリンカの輸入を手掛けるonewさんで買えるようになりました。
ドラゴンフルーツ
サボテンの実でピタヤとも呼ばれます。
果肉は白や赤が有名で、意外とアッサリとした味が特徴的。
メキシコの方では雨乞いの儀式に使う神聖なお酒なのだとか。
世界では売っている
カリフォルニア州のウチワサボテンの実のフルーツブランデーがあるようです。
venturaspirits.com(※海外サイトに飛びます)
トウモロコシの茎汁
トウモロコシはコーンウイスキーやトウモロコシ焼酎として今でも飲めますが、実は硬い茎を絞れば糖分を含んだ甘い汁が採取できます。
トウモロコシの茎や芯は通常バイオエタノールの原料として使われるのですが、エタノールということは当然お酒なのです。
アステカの方で飲まれていたそうですよ。
「コーンウイスキーに茎汁も含まれています」と言われても不思議ではない!?
バナナ
バナナは糖分も多いけど、青いバナナはデンプンが多いそうです。
穴を掘って青いバナナを入れて4〜5日追熟させ、別の穴にバナナの葉を敷き、皮を剝いたバナナを入れて搾汁し、2日間発酵させるそうです。
100本のバナナから80リットルの酒が取れるとか。
蘇鉄(ソテツ)
黒糖焼酎が有名な奄美大島。
過去に深刻な食糧不足から蘇鉄の幹から取れるデンプンや実を食用としていたことが。
しかし、有毒なので毒抜きが必要。
その時にキンミヤ焼酎で有名な宮崎本店さんから「サンパーム」という名称で売られていました
焼酎以外にも「シンガイ」(芯の粥)、実(ナリ)から作る味噌「ナリミソ」を作って食べていたそうです。
どんぐり
古来より食べられていて、現代でもアクの少ない品種を選んだり、アク抜きをしっかりすれば食べられます。
そしてデンプンが豊富なので発酵が可能。
つまり栗焼酎のようなもの?
ビート
ビート(ビーツ)は甜菜やサトウダイコンとも呼ばれるほどの甘さのある根菜で、鮮やかな色合いからボルシチの材料にしたり、天然のオリゴ糖を含む甜菜糖の原料としても知られています。
寒冷地での貴重な栄養源でもあり、ビートのワインや蒸留酒も作られているようです。
甜菜糖の蒸留酒…ラムみたいなものだろうか?
大豆
豆類はデンプン質を多く含むので焼酎に出来そう…と思っていたらアメリカのバイオエタノールは大豆から作られているものもあるのだとか。
そして大豆のウォッカがあるのだとか。
Lv.3 探しに行けば飲めるかも?
山査子(サンザシ)
棒状の甘酸っぱいドライフルーツで有名なサンザシ。
スーパーでも山査子酒は売っているけれど、ほぼリキュールです。
中国では山査子そのものを発酵させて果酒(フルーツワイン)として楽しんでいるのだとか。
山茱萸(サンシュユ)
サンシュユは秋に小さな赤い実をつける植物。
漢方薬に使われるほどの薬効があり、日本でも焼酎に漬け込んで飲むことがあります。
こちらも中国ではサンシュユそのものを発酵させた果酒があるようですよ。
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バオバブ
アフリカの20mを超えることもある巨大樹バオバブ。
果実はビタミンCが豊富で生食やジュースにしていて、アフリカの最初の発酵飲料はバオバブの可能性があるそうです。
また、若葉は野菜やソースの材料、樹皮は繊維からロープを作ったり解熱剤として使用されています。
マフア
インドのアカテツ科に属する20m近く育つ高木でイリッペやモア、モワとも呼ばれます。
マフアは花に糖分を含むので、それを蒸留酒にする非常に珍しい存在。
インド神話の中に「スラ―酒」というものがあり、マドゥーカの花から蒸留されたお酒と言う説があるそう。
マフアの学名が「Madhuca longifolia」なので、もしかしたらこのお酒かも?
この木は木陰でさえも人を酔わせる力を持っているのだとか。
花の生の食感はシャクシャクしていて、乾燥させて香辛料と一緒に炒めたり、粉にしてチャパティに。
樹皮は煎じて収斂材や強壮剤に。
種は油分が多いのでマフアバターが作られ、ランプの材料や湿布薬、保湿などに。
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エンセーテ
エンセーテはエチオピアで栽培されるアビシニアバナナや偽バナナとも呼ばれるバショウ科の植物。
果実は食用ではないが、花と花軸から糖分が得られ、これをお酒にしたり、茎や根茎のデンプンからもお酒を作れる非常に珍しい存在。
花が咲くのに5〜10年かかり、咲き終わると枯れてしまうので材料をそろえること自体が難しい幻とも言えるお酒なのです。
エンセーテの若い茎や葉は野菜として食用になり、葉は家畜の餌に、古い葉は屋根や袋・ロープ・マットなどを作る繊維をとるために使われるなど捨てるところがほとんどありません。
ジャックフルーツ
ジャックフルーツはパラミツとも呼ばれるインドやバングラデシュのフルーツで、土に埋めて発酵させるお酒があるようです。
食感が豚肉に似ているから代用肉としてヴィーガンの方に人気があるそうですよ。
ウランジ
ウランジはタンザニアの竹の樹液のお酒です。
タケノコの頂部を少しずつ削り取り、流れてきた樹液が自然発酵して酒になりますが、竹は大量の水分が必要な為、収量は天候に大きく左右されるそうです。
日本でも2001年に竹林で数百の切り株から酒がわいたという記事があり、切り株の中には白く濁ったどぶろく状の液体が溜まり、ほのかにお酒の香りがしたとか。
切り株に木の実などが入って自然発酵したか、竹の糖分が発酵したと考えられています。
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コム
南部アフリカのカラハリ砂漠周辺で採取され、グレヴィア・フラーヴァとも呼ばれている。
硬い種が大部分で、薄い果肉を使用し、酵母はシロアリ塚から採取するそうです。
出来上がったら乾燥させて保存食にしたり、水で戻してお酒にします。
また、幹は丈夫で柔軟性に富むので弓や槍、竿、バスケットや歯ブラシに使われるとか。
何回も味見するから醸造終了時には1/4は減ってるって。
パースニップ
パースニップはアメリカボウフウとも呼ばれる白いニンジンのような見た目の根菜です。
ニンジンと同じセリ科の植物で根を食することや冬に収穫されることなども似ていますが、ジャガイモのようなホクホク感やフルーツにも匹敵する甘さが特徴。
ヨーロッパの方では一般的な野菜で、ジャムやお菓子作りにも重宝され、甘口ワインも作られているそうです。
閑話休題:保存容器の話
かつて西ヨーロッパに住んでいたケルト民族は白樺、イチイ、ハンノキ、トネリコ、モミ、オークなどの木材から容器を造っていたと言われています。
樽材を縛って固定するタガには、柳やヘーゼルの枝の輪が使われたとか。
現代でも日本の焼酎では桜、栗、楓、スリランカのココナッツアラックではハルミラやチーク、ブラジルのカシャッサではアンブラーナ、ジェキチバ、パウ・ブラジル、バルサモ、カネラササフラス、イペー、カバリウバ、アメンドイン、フレイジョー、グラピア、ジャトバ、アリリバ、アラウカリア、ジャケイラ、タピンホアン、セレジェイラ、アマレーロ、ペレイラ、ロウロカネラetc…40種近くあるそう。
それ以外にも古代のシュメール(メソポタミア)では、ナツメヤシの幹をくりぬいてビールやワインを貯蔵していたという話も…。
ミードの貯蔵に切り株をくり抜いて貯蔵していたという話も聞いたことが。
またモンゴルの馬乳酒は、革袋に馬乳を入れて保存することで発酵をさせています。
木材や革袋の油分やタンニン等がアルコールによって溶け出す…。
どんな味がするの?
鹿革を使ったお酒
人類が初めて身に着けたであろう鹿の皮を使ったお酒というのも。
Lv.4 失われたと思っていい
メスキート
メスキートは木材はゆっくり高温で燃えるためバーベキューの燃料や燻製用として使用します。
豆と莢にはナッツのような香ばしさやキャラメルのような甘みもあり、食物繊維等が豊富な低GI食品としてパウダー状のものが売られています。
中南米で採取でき、お酒にしていたと言われています。
エノキ
チグリス川・ユーフラテス川の上流域に発酵飲料の発達過程を辿れそうな遺跡「チャタル・ヒュユク」がある。
この遺跡では何らかの飲料の主原料の可能性が高い「エノキ」が見つかったそう。
日本でも見られるエノキは甘く栄養価の高い果実で、デーツのような味と固さがあるそうです。
ユッカ
ユッカはアスパラガスの仲間で花茎と呼ばれる部分を焼いて食べたり、花をサラダや煮物にしたりします。
その甘い樹液をお酒にするのですが、実はテキーラやメスカルに使われるアガベもアスパラガスの仲間であるキジカクシ科の植物。
つまりユッカの蒸留酒はテキーラの仲間とも言えるわけです。
オコレハオ
オコレハオはハワイに寄港した船長が酒好きだったらしく、酒欲しさに自ら船のボイラー釜を持ち込んで蒸留したという話があります。
この時の鉄製(hao)の釜が女性の尻(okole)に似ていることが酒名になったというそうです。
原料はフラダンスの腰ミノに使われるティルート。
この根(芋)を蒸すと甘みのある液が取れるので、発酵蒸留させるそうです。
しかし、このティルートは以下の二説があり、
「タロイモ(サトイモ科)」
「センネンボクやコルジリネとも呼ばれ、キジカクシ科に属する。」
ほぼ失われているので正解は分からない。
焼酎の様にどちらでも良いのかもしれない…?
コショウボク
コショウボクはピンクペッパーとして用いられていますが、ウルシ科に属しており胡椒(コショウ科)とは別物。
20Lのお酒を作るのに約4000個(樹木数本分)必要という実験結果があり、種子と外皮は苦くて樹脂のような味がするので濾し取ったそうです。
また、ピンクペッパーは3種類あるので、見かけたら調べてみるのも面白いかもしれません。
ピンクペッパーの種類
- コショウ科の胡椒の赤く色づいた果実
- バラ科の西洋ナナカマドの果実
- ウルシ科のコショウボクの果実
Lv.5 参考資料にも一文しかない
サワーソップ
参考文献にサワーソップ(トゲバンレイシ)(Annona muricata)とだけ記載されていました。
バンレイシは釈迦頭(シャカトウ)とも呼ばれ、台湾などで栽培されているトロピカルフルーツです。
食感はネットリとした中に梨のようなシャリシャリ感、味は甘酸っぱさがあるそうです。
マンザニータ
参考文献にツツジ科のマンザニタの実とだけ記載(略)
ベアベリーやウワウルシ、クマコケモモと呼ばれ、寒冷地に自生するそうです。
尿路の消毒効果が高く、古くから薬効を期待して食されてきて、現代でも第2類医薬品として販売されています。
ジジフスミストル
参考文献には遺跡から発掘された発酵飲料を作っていたと思われるツボから「ブドウのような見かけの木(Ziziphus mistol)」が発見(略)
学名で検索するとナツメが「Ziziphus jujuba」というのでナツメの仲間になるのかもしれません。
ジジフスミストルは果実を食用としたり、焙煎したミストルコーヒーはノンカフェインのコーヒーとして用いられているようなので、いずれ日本にも上陸するかもしれませんね。
チャナー
参考文献には遺跡から発掘された発酵飲料を作っていたと思われるツボから「スモモのような実をつける木(Gourliea decorticans)」が発見(略)
学名の記載があったので検索すると「チャナー」と呼ばれるマメ科の植物で、実は非常に甘く食用とされているのでお酒にするには十分なのかもしれません。
スポンディア
参考文献にウルシ科ニンメンシ属の樹木の実(spondias spp)とだけ記載(略)
ウルシ科ということでマンゴーやカシューナッツの仲間で、タイで果実が食されているようです。
カプリンチェリー
参考文献にサクラ属の実(Prunus capuli)とだけ記載(略)
メキシカンブラックチェリーとも呼ばれているようです。
サクランボの仲間になるのでお酒にできる可能性は非常に高いです。
メドロンホ
イチゴノキと呼ばれるイチゴに似た果実を実らせる植物。
ただし味はあまり無いそうな…。
ポルトガルでは蒸留酒にするらしいです。
Lv.? 人類未踏
わし座
1995年にわし座付近で発見された太陽系の直径の1000倍もある巨大な宇宙雲で、400兆UKパイント分(1UKパイント=約568ml)のビールを作れるだけのエチルアルコールが見つかりました。
これは地球上全ての人間が毎日17万リットル飲んでも10億年かかるほどの莫大な量になる計算。
しかしエタノールを始めとした毒性のある成分も含まれており、そのままでは飲めたものではないそうです。
いて座
サジタリウスB2分子雲にもアルコールが含まれており、天の川銀河の中心部分にある育星場(星が形成される分子雲)にも2880億マイル(約4600億km)にも及ぶメタノールの橋が架かっているのが発見されました。
メタノールなので毒性がありますが、ラズベリーの味とラム酒の香りの成分も発見されています。
星雲は人類史以前から存在しているので、正確にはラズベリーが宇宙雲味で、ラム酒が宇宙雲の香りと言うべきかもしれません。
ラム酒とラズベリーで宇宙リキュールや星雲カクテルなんてものを作ってみてはいかがでしょう?
ラヴジョイ彗星
2014年にラヴジョイ彗星(C/2014 Q2)が太陽や地球に接近しているのが観測され、ピーク時に毎秒ワイン500本分ものアルコールを放出していることがわかりました。
酒類に含まれる身近なエタノールが彗星から検出されたのはこれが初めてで、単糖類の一種であるグリコールアルデヒドや21種類の有機分子も彗星から発見されたそうです。
「彗星の衝突によって生命誕生につながる有機分子が地球にもたらされた」という説があり、ラヴジョイ彗星における発見は生命の誕生を解明する鍵になりそうです。
Lv.?? 神の領域
ソーマ
サンスクリット語でソーマと呼ばれる植物はヒンドゥー神話で非常に重要な植物ですが、現存する植物からは特定できないと言われています。
天国のインドラ神の庭で栽培されたソーマは人に活力と永遠の命、インスピレーションを与えると言われており、その草汁にギー(精製バター)や蜂蜜を混ぜて神々に供えられ、その残りを人々はいただくのだが飲みすぎると激しい酔いや物忘れに苛まれるのだとか。
終わりに
古くに作られていたお酒や世界の民族が今でも作っていると言われる珍しいお酒の数々…。
いつかは飲めるものでしょうか?
全部飲んでお酒マスターを名乗ってみたいものです。