椰子樹液の蒸留酒「メンディス スペシャルアラック」
目次
始めに
スピリッツの棚を見ていると大抵「ラム」「ウォッカ」「テキーラ」で終わるお店が多いのですが、下の方に聞き慣れぬ「アラック」という文字が…。
手に取ってみると「ココナッツの花苞を発酵」と書いてありました。
クク
花ってことは実の中のココナッツウォーターじゃないんだよね? そもそもなんて読むの?
というわけで調べました。花苞(かほう)です。
花に送られる樹液、つまりは将来的に実になるための樹液。
これを煮詰めると「ココナッツシュガー」になるそうです。
平たく言うと「ココナッツシュガー(になるもの)のラム酒」ということです。
これが重要。飲んだところ、ココナッツ感はありません。マリブとか想像しないように!
メンディス スペシャルアラックについて
他の種類のアラックもあったので見てみましたが、お米と合わせているものが多い印象でした。
メンディススペシャルアラックはココナッツシュガーのみで作られている感じなので購入です。
説明書き通り確かになめらかだけど、オーク樽3年熟成にしては最初薄い印象が…?
だけど段々と独特な香りが癖になってくる感じ!
名称 | メンディス スペシャルアラック |
色 | 琥珀色 |
香り | 甘い香り |
味わい | 後味が独特 |
内容量 | 750ml |
価格 | 1628円(税込) |
アルコール度数 | 34~35% |
原産国 | スリランカ |
その他のおすすめ
ハルミラという木樽で熟成されたアラックです。
(ハルミラはインドからフィリピンにかけて自生しているアオイ科の高木)
アラックについて
それではアラック全体についてもまとめていきましょう。
花蜜は収穫後時間が経過すると、野生酵母によってどんどん発酵が進みます。
これを蒸留したものが中東や東南アジア辺りで「アラック」と呼ばれる蒸留酒に分類されますが、アラック自体が原材料の定義が曖昧で米・ココナッツ・ぶどう・ナツメヤシ(デーツ)等を使った蒸留酒の総称といった感じです。
また、名称は国によって違います。
醸造酒 | 蒸留酒 | 椰子の種類 | |
英語 | トディー | アラック | |
インドネシア | トゥァク | アラク | サトウヤシ、ココヤシ、パルミラヤシ |
フィリピン | トゥバ | ランバノグ | ココヤシ |
スリランカ | ラー | アラック | ココヤシ、パルミラヤシ、キトゥルヤシ |
ココナッツシュガーについて
ココナッツには薄い黄色の花が咲き、この花が咲く前の「花苞」と呼ばれる部分の先端を少し切断すると、蜜(トディー)が流れ出てきます。
その切り口に竹筒を当てて蜜を集めます。1本の木から半日で0.5L~1Lほどの蜜が取れます。
この花蜜を収穫後すぐに煮詰めて水分を飛ばすと「ココナッツネクター」や「ココナッツシロップ」と呼ばれる甘い液糖になります。これをさらに煮詰めて結晶化させたものが「ココナッツシュガー」です。
ココナッツの実
ココナッツの1つの実の重さは2~4kgです。緑色の若い果実にはココナッツウォーターがたっぷりと入っています。
ココナッツウォーターは熟すにつれて胚乳と呼ばれる可食部に変化するので、熟した実にはココナッツウォーターは微量しか入っていません。
成熟した茶色い果実は胚乳が分厚くなり、そこからココナッツミルクやココナッツオイルが採れます。
椰子全般と特徴
椰子の種類と特徴・主な用途
種類 | 特徴や主な用途 |
ココヤシ | 種子の胚乳を絞る=ココナッツミルク 種子の油分を絞る=ココナッツオイル 種子中心部の水分=ココナッツウォーター ココナッツウォーターを酢酸発酵=ナタデココ 新芽の内側=ハート・オブ・パーム(野菜) |
キトゥルヤシ | 樹液の味が最も良いとされ、椰子蜜や椰子糖に使用される。 |
パルミラヤシ | 樹液の味が良く、椰子蜜や椰子酒に使用される。 種子から発芽したもやしを食用にする。 |
キングココナッツ | 種子が大きく、ココナッツウォーターも多い。糖分が少ない為、水分補給に適している。 樹液は糖分が低い為、使用されない。 |
サゴヤシ | 食用デンプンが採取できる。 これに水と椰子糖を加えてサゴプリンが作られる。 |
アブラヤシ | 果肉からパーム油、種子からパームカーネル油が採取できる。 |
ナツメヤシ | デーツと呼ばれる果実が採取できる。 |
サトウヤシ | 椰子糖や椰子酒に使用される。 |
サトウナツメヤシ | 椰子糖に使用される。 |
コウリバヤシ (タリポットヤシ) | 最大のヤシ種で、傘や仏典を筆記する貝葉に使用される。 |
ニッパヤシ | 伝統的家屋の屋根材や壁材として使用される。 |
ラフィアヤシ | ロープやカゴ、敷物の材料として使用される。 |
サラカヤシ | 果実が食用になる。 |
オオミテングヤシ | 食用・果実酒・漁網・ハンモック・建材などに使用される。 |
オオミヤシ (フタゴヤシ) | 植物界で最大の種子をつける。 |
シュロ | 南九州が原産で和歌山にも多く分布し、寒さに強いため東北まで分布している。 |
アサイー | 実は非常に栄養価が高いと言われている。 |
チャンタドゥーロ | 果実が塩漬け、砂糖漬け、蜂蜜漬けなどで食べられ、芽も食べられる。 |
開花・結実の違い
- プレオナンシック(多回結実性または多巡結実性)
-
寿命のある限り生長を続けながら開花結実する。
ココヤシ、パルミラヤシ等 - ハパクサンシック(一回結実性または一巡結実性)
-
ある時期が来ると生長が止まり、開花結実後枯れる。
キトゥルヤシ、サトウヤシ等
樹液の採取方法
- 花序からの採液方法
-
①花序を縛る。
②先端部を叩いて潰す。(花序の生長を止めたり、流れ出た樹液が内部に流れ込んでしまうと腐敗の原因となるので、それを防ぐためである。)
③1日1回外面を叩く。1日2回先端部を2mm程度切り落とす。
④1週間程度で樹液が出始めるので叩く作業をやめ、切り落としのみを行う。
薬剤を調合して塗布する。(地域による)
以上の工程で1本の木で1~1.5L、約1ヶ月間採液可能。 - 幹頂部からの採液方法
-
この方法は樹そのものが枯れてしまう可能性があるので、注意しながら幹の先端に近い部分に切り込みを入れる。樹勢に影響するが、花序から採液しにくい品種に用いられる。
樹を伐採した後もしばらくは生きているので、貯蔵デンプンを糖化させる働きが残っている。
これは里芋やじゃがいもが体内の水分だけで芽を出す働きと同じと考えられている。
(ヤシと里芋は分類学的に近縁種である)
変質防止
椰子の樹液は即座に発酵が始まってしまうので、流通させるには保存容器を清潔に保つ必要が出てくる。
いずれにしてもできるだけ早く加熱して劣化を防ぐのが有効。
- 土器:焼く
- 竹筒など:燻煙
- ポリタンクやステンレス:洗浄
- 抗菌性のあると言われる植物の樹皮、葉、根などを入れる。(フタバガキ科の樹皮やウルシ科の葉などが多い。)
- 石灰を容器の内面に塗布する。pHを上げて微生物の増殖を抑える。
- 化学物質を添加する。食品衛生法の配慮がいるが、ほぼ確実に微生物の増殖を抑え、煮詰める際に完全に除去出来る。
最後に
ココナッツを始めとした椰子は用途が非常に多く、実・樹液・木材等生息地域の住民に愛されています。
また、健康効果が高く注目される一方、広大な熱帯雨林や泥炭地だった土地を開発して作られた巨大な農園で栽培されている側面もあるので環境破壊も問題になっています。
とても長くなったけど、それだけ生活に密着した植物なんだね!
背景を知って飲むと面白い♪