フェニセミナー ~カシューアップルの蒸留酒~
目次
始めに
カシューナッツは有名だけど、その実であるカシューアップルは?
さらにそれが蒸留酒として存在していたら?
インドにカシューアップルの蒸留酒「フェニ」が存在すると本に記されていた。
しかしそれはインドのごく限られた一部にのみ存在し、日本には輸入されていないので飲む術がなく、現地に行くしかない。
クク
そう思っていたところ、Twitterでこんなのを発見。
日本で飲めるの!?
しかも偶然休みの日に!
これは行くしかないよね!
フェニセミナーの基本情報等
会場
- 会場
Bar Ben Fiddich - 住所
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-3-7 大和家ビル9F - 日時
2023年5月15日(月)
14~16時
行き方
Ben Fiddichさんは「世界のBest Bar 50」の常連で、オーナーの鹿山氏は「酒類業界に影響を与えた世界の100人」に選出されるほどの経歴の持ち主。
いつかお伺いしたいと思っていた憧れのBen Fiddichさんに、こんな形で訪れることになろうとは…。
めぐり合わせに感謝です。
予算
セミナー代:4000円
フェニセミナーの様子
まずはウェルカムドリンクとして3杯のフェニ。
プラカップに入っていて何も分からない。
おそらく誰も飲んだことのない蒸留酒。先入観無しの意見を聞きたいという趣向のようです。
前情報は「カシューフェニ」「ココナッツフェニ」「ドュクシリ(ボタニカルを入れて蒸留したもの)」というだけ。
緑のラベルがココナッツフェニ、カシューフェニとドュクシリはピンクのラベル。
赤いお酒は事前に用意してあったカクテルです。
筆者の感想
- だいぶ土臭くて根が入ってそう→ドュクシリ
- クセが強く1に近いイメージ→カシューフェニ
- 結構穏やかで飲みやすい→ココナッツフェニ
というものでした。全体的に乳酸菌の香りや煙っぽさがあるのが特徴でしたね。
謎の果実であるカシューアップルとそこそこ馴染みのあるココナッツシュガーなら3番がココナッツフェニかな~?
そして一番好みだったのは3番。
さぁ、当たるかな?
テイスティング方法として
鼻をつまむ→お酒を口に入れて転がし、味を確かめる→鼻を開放して香りを確かめる
というのを教わりました。
こうすることで味覚と嗅覚を分けて感じることができるそうです。
正解は?
- ドュクシリ
- ココナッツフェニ
- カシューフェニ
でした。惜しい!
ドュクシリはココナッツフェニ+サルサパリラの根なので1と2は似ていたようです。
(サルサパリラはドクターペッパーやルートビアの風味付けにも使われるもの)
フェニ(Feni)について
- インドの西海岸に面するゴア州でのみ作られる蒸留酒
- 主原料は「カシューアップルの果汁」「ココナッツの樹液」の2種類のみ
- 2回蒸留
- 2009年にGI登録
- 生産者数:約2000件
- 年間生産量:約3000万ℓ(ほとんど地元で消費)
- 約450年の歴史がある
- フェニは「泡」という意味
フェニは3種類
- オリジナル
-
カシューフェニとココナッツフェニ
- ボタニカル
-
ココナッツフェニの2度目の蒸留時にボタニカルを一緒に蒸留(ドュクシリ等)
- レセルヴァ
-
ボタニカルの蒸留液を氷砂糖の上に垂らして集めたもの
カシューアップルについて
- 南米原産のウルシ科の常緑樹
- 和名は「カシューナットノキ」、
学名は「Anacardium occidentale」 - パプリカをひっくり返したような形をしていて先端の種子(カシューナッツ)を採取する
- 果実に見える部分は花托が肥大化した「偽果(ぎか)」と言われるもので、種子を保護する機能は備わっていないために非常に傷みやすい
- 偽果部分をジャムやチャツネにしたり、絞ってジュースやフェニとして食する
非常に傷みやすいので日本では入手しづらいですが、冷凍の果汁やドライフルーツといった形で輸入されているようです。
キョウダイ マーケット
¥3,942 (2024/09/24 00:27時点 | 楽天市場調べ)
カシューフェニの作り方
- カシューアップルは熟して落果したもののみを使う
- カシューアップルとカシューナッツを分けて選別する
- 果汁を絞る
- 熱帯気候なのですぐに自然発酵が始まる
ココナッツフェニの作り方
- 木に登り、花が咲く前の花苞(かほう)という部分を切り取り、樹液を採取する
1本の木から半日で0.5~1ℓ程度採取できる(→これを煮詰めるとココナッツシュガーになる) - 熱帯気候なのですぐに自然発酵が始まる
フェニの蒸留
土窯を用い、薪を燃焼させて2回蒸留を行います。
土窯からコンデンサーへと繋がる竹筒は、内部を焼いて炭化させることで不純物を取り除く効果が。
1回目はウラック(Alc15%)と呼ばれ、2回目はウラックに発酵果汁を加えてAlc40%程度にします。
フェニは完成後も加水を一切行わないので、蒸留中は土窯を手で触って温度を確認したり、蒸留液を振って中に出来た泡の状態でアルコール度数を確認するそうです。
そのため、非常に繊細な作業で技量が要求されます。
自然発酵ということで乳酸菌を感じたり、薪で蒸留させているので煙っぽさが付いているみたい。
インド・ゴア州について
- インドの西海岸に面している。
- インド最小の州(奈良県と同程度の面積)
- 人口は約150万人
- 熱帯気候
- 元ポルトガル領で16世紀にブラジルからカシューの木が持ち込まれた
- キリスト教徒が多く飲酒文化が根付いている
- インド国内で酒税が一番低い
他にもフェニを使ったカクテルを飲みながら、どういった使い方をしているかの紹介がありました。
- カシューフェニ
-
柑橘系に合い、辛いスパイスをアクセントに。
- ココナッツフェニ
-
酸味があるので甘いものやスパイスに合わせてデザート系に。
- ドュクシリ
-
土っぽさが主役になるように生姜などを合わせて。
フェニの生産者について
フェニはインドでは田舎の酒として扱われていて「大きな収入にならない」「重労働」「製法が村の秘伝になっている→品質が不安定」といった問題が懸念されているそうです。
しかし近年10ブランドほどがフェニを一般流通させるようになってきました。
今回飲ませていただいた「Cazulo」さんは2013年に創設され「田舎の酒」というイメージを「安定した品質」と「洗練されたデザイン」で伝統的なフェニの価値を高めていこうとしています。
大量生産できるように土窯をたくさん作ったそう。
伝統を重んじているんだね。
セミナー主催者のフェニ記録
今回フェニセミナーを開催してくださった鹿山博康さんと太田瑞穂さんのインド・ゴア州の旅の様子が公開されています。
現地の様子がたくさんの写真で見られるので、インドに行ったような気分になれます!
Bar BenFiddich 鹿山博康 (note.com)
カシューの蒸留酒「フェニ」の世界に酔う インド・ゴアの地域酒〈前編〉
朝日新聞デジタルマガジン 太田瑞穂
カシューの蒸留酒「フェニ」の世界に酔う インド・ゴアの地域酒〈後編〉
最後に
Bar Ben Fiddichさんで行われたフェニセミナーはまだ世界的に知られていない、インド・ゴア州のカシューアップルやココナッツの樹液を使用した伝統的な蒸留酒でした。
煙たい香りや土っぽい印象も強いけれど、飲んでみると意外とフルーティーで飲みやすかったりします。
認知が広がり正式な輸入が開始されれば日本が初めての輸入国になるそうなので、今後の活躍に期待です!
どうしてもカシューアップルを味わいたいあなたへ
非常に傷みやすいので日本では入手しづらいですが、冷凍の果汁やドライフルーツといった形で輸入はされているようです。
キョウダイ マーケット
¥3,942 (2024/09/24 00:27時点 | 楽天市場調べ)